ドイツで指折りの左派・グラスが、武装SSであった少年時代を含む過去を綴った自伝。
2年前ドイツで発売前にグラスの告白がなされ、ベストセラーになったことからその告白の内容だけでなくタイミングもいろいろと議論を呼んでおりました。

「黙っているのが苦しかった」という割には、タイミングが抜群すぎませんかね先生。
芸能人の離婚告白じゃないんだからさ。

それはともかく、今年日本語訳が発売されましたので読みました。
グラスは「蟹の横歩き」しか読んでないけど。

まーこれが読みにくい。
グラスがもともと詩人だったせいか、訳が悪いのか。
ちょっと訳が硬すぎるというか、ドイツ語に忠実すぎるんじゃない?
ドイツ語版を読んだわけじゃないけど、ドイツ語っぽい言い回しをそのまま日本語にしているだけのように見受けられる。

まぁでも私は翻訳できないしドイツ語で読んでもすぐ飽きちゃうから、文句を言う筋合いはないんだけど。

彼の作品を読んだことがないと、なんだかよくわかりません。
彼の小説は、彼の若かりしころの体験を元に書かれていて、そのタネあかしのような内容のようです。

すくなくとも「ブリキの太鼓」と「犬の年」は読んでたほうが楽しめたかな。

彼がナチスに同調したのは、当時のドイツ人としては特殊なことでもなんでもなく、普通の少年と同様ヒトラー・ユーゲントや親衛隊に「純粋」にあこがれて入隊した、というのはまぁわかります。彼は別に生まれたときから作家だったわけではないし、レジスタンスの家に生まれたわけでもないので。

ただ、その後彼が真逆の立場をとる過程はあまりよくわかりませんでした。
彼がいかにして芸術に、そして作家になったのか、に重点を置いているので。

とするとなぜ彼は晩年とも言えるこのときになって急に武装SSだったことをいいだしたのかしら?
彼にとって重要なのは「思想」ではなく「芸術」のようなのですが。

彼は決定的な記憶をたどるときには決して確信した言い方をせず、常に「玉ねぎの皮を一枚一枚剥くように」記憶をたどります。
それは「記憶のあいまいさ」を「明確にする」と同時に、自分の過去と正面切って向き合う覚悟はまだないということの現われなんじゃないかなぁと思いました。

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