憂い顔の「星の王子さま」
2007年8月13日 読書
「星の王子さま」はなぜわかりにくいのか、その原因は翻訳者の翻訳力(フランス語力)と誤訳をほったらかしにしていた出版社のせいであると、最近の新訳を含めてぶった切った1冊。
ママは面白いと言ってましたが、うーむどうでしょう。
確かに「星の王子さま」はなんだかフワフワした妙な日本語で、わかりにくかった。その間違いを丁寧に、辞書(仏仏、仏和あわせて)の引用を交えて文法的に解説している点は、長年の謎が解けたようで目からうろこが落ちる思いがする。
翻訳界のタブーを破ったような著書で、「よくぞ言った!」と喜ぶ人も多いだろう。
しかし私は、手放しで賞賛することはできない。
まとめてみると数々の点で疑問を感じる。
まず、「はじめに」で著者が「初級フランス語文法ができればわかる」が述べているが、読み進めていると「フランス語の知識の無いものお断り」といった解説が多くなってくる。
フランス語のわからない私は、著者の怒りの勢いで、納得させられたような、煙に巻かれたような気のする部分も多くあった。
新訳比較のところで英訳も掲載しているが、英語もフランス語も得意でない人はどう思ったのだろうか。
次に、英訳に対する著者の態度。
内藤濯はじめ日本語翻訳者のことは科学的に、メッタクソにぶった切りつつ、英訳に対しては単に「欧米語はうらやましい」と両手離しで認めている。東大の名誉教授なのだから英訳の検証も済ませているのだろうと思うのだが、そういった肩書きを背景とした賞賛を本書の出だしでメッタクソに言っているところ、もうちょっと英訳の検証に言及すべきだったのではないかと思う。
文体から、著者の教養がにじみ出ていない。「はじめに」で著者自身も認めている通り本当にえげつない。
書いている内容はフランス語の第一人者の書いているものなのだろうが、文体だけを取り上げるとじじいたわごとにしか響かない。今時「女子大生」「女子学生」という単語を使うのは時代錯誤だ。「星の王子さま」を読んでいるのは女性だけではないはず。
また、作品も読んだことの無い作家を指して「アホ」などというのは、おごりなのではないかと思わせる部分も多い。
そんなに怒ってんだったら、なぜ独占出版権の期限が切れる前に、内藤濯に対する怒りの書をしたためなかったのか。そうすれば新珍訳が出る可能性も低かっただろうし、わざわざ新訳に怒る必要もなかった。
「珍訳と出版社に怒っている」という割には、翻訳者だけを厳しく糾弾している。出版社への責任を問う内容も盛り込んでいればもっと面白かったと思う。
主張が首尾一貫していないところもある。
余計な言葉をつける必要はない、うつくしい翻訳は忠実な翻訳だと繰り返し批判することもあれば、別の箇所で補われている語は「コレは必要である」と認めることもある。
フランス語を愛し、欧米語に憧れを抱くあまり、日本語を蔑視している印象がある。ひとつのフランス語の文章が、様々に訳されているところは、日本語の語彙の豊かさと解釈することはできなかったのだろうか。
この本は、訳本に疑心暗鬼を抱かせるだけ抱かせておき、「原語で読むか自分で訳すべきだ」という解決策しか示さない。
みんながみんな東大教授ではないので、そんなことはできない。
著者自身が「翻訳者は言語と言語を橋渡しする渡し守」と言いつつそういった解決策を示すとは、恐れ入ります東大教授。
みんながみんな、世界中の言語を取得できるわけないでしょ。
それともアホには異国の文学を楽しむ資格はないということでしょうか。
これだから東大は、といわれても仕方ない。
ママは面白いと言ってましたが、うーむどうでしょう。
確かに「星の王子さま」はなんだかフワフワした妙な日本語で、わかりにくかった。その間違いを丁寧に、辞書(仏仏、仏和あわせて)の引用を交えて文法的に解説している点は、長年の謎が解けたようで目からうろこが落ちる思いがする。
翻訳界のタブーを破ったような著書で、「よくぞ言った!」と喜ぶ人も多いだろう。
しかし私は、手放しで賞賛することはできない。
まとめてみると数々の点で疑問を感じる。
まず、「はじめに」で著者が「初級フランス語文法ができればわかる」が述べているが、読み進めていると「フランス語の知識の無いものお断り」といった解説が多くなってくる。
フランス語のわからない私は、著者の怒りの勢いで、納得させられたような、煙に巻かれたような気のする部分も多くあった。
新訳比較のところで英訳も掲載しているが、英語もフランス語も得意でない人はどう思ったのだろうか。
次に、英訳に対する著者の態度。
内藤濯はじめ日本語翻訳者のことは科学的に、メッタクソにぶった切りつつ、英訳に対しては単に「欧米語はうらやましい」と両手離しで認めている。東大の名誉教授なのだから英訳の検証も済ませているのだろうと思うのだが、そういった肩書きを背景とした賞賛を本書の出だしでメッタクソに言っているところ、もうちょっと英訳の検証に言及すべきだったのではないかと思う。
文体から、著者の教養がにじみ出ていない。「はじめに」で著者自身も認めている通り本当にえげつない。
書いている内容はフランス語の第一人者の書いているものなのだろうが、文体だけを取り上げるとじじいたわごとにしか響かない。今時「女子大生」「女子学生」という単語を使うのは時代錯誤だ。「星の王子さま」を読んでいるのは女性だけではないはず。
また、作品も読んだことの無い作家を指して「アホ」などというのは、おごりなのではないかと思わせる部分も多い。
そんなに怒ってんだったら、なぜ独占出版権の期限が切れる前に、内藤濯に対する怒りの書をしたためなかったのか。そうすれば新珍訳が出る可能性も低かっただろうし、わざわざ新訳に怒る必要もなかった。
「珍訳と出版社に怒っている」という割には、翻訳者だけを厳しく糾弾している。出版社への責任を問う内容も盛り込んでいればもっと面白かったと思う。
主張が首尾一貫していないところもある。
余計な言葉をつける必要はない、うつくしい翻訳は忠実な翻訳だと繰り返し批判することもあれば、別の箇所で補われている語は「コレは必要である」と認めることもある。
フランス語を愛し、欧米語に憧れを抱くあまり、日本語を蔑視している印象がある。ひとつのフランス語の文章が、様々に訳されているところは、日本語の語彙の豊かさと解釈することはできなかったのだろうか。
この本は、訳本に疑心暗鬼を抱かせるだけ抱かせておき、「原語で読むか自分で訳すべきだ」という解決策しか示さない。
みんながみんな東大教授ではないので、そんなことはできない。
著者自身が「翻訳者は言語と言語を橋渡しする渡し守」と言いつつそういった解決策を示すとは、恐れ入ります東大教授。
みんながみんな、世界中の言語を取得できるわけないでしょ。
それともアホには異国の文学を楽しむ資格はないということでしょうか。
これだから東大は、といわれても仕方ない。
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